ウサギが心理士を目指すまで

心理士見習いの日常を綴っていくブログ

動機づけ研究についてまとめてみた① ─内発的動機づけと外発的動機づけ+α─

 こんにちは。サイコうさぎです。

今日は、動機づけのお話。

 

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日々生きていると、しばしば「やる気を出せ!」と言われたり、「なんか今日はやる気がでないな…」なんて思ったりすること、ありますよね。

「やる気を出したい」のに、どうもうまくいかなくて自己嫌悪に陥ったり、逆にやる気がありすぎて、他のことに目が行かなくなったり。なかなか厄介な存在であり、強い味方でもある。

 

しかし、そもそも「やる気」とは何なんでしょう?

辞書によれば、やる気とは「物事を積極的に進めようとする気持」(『広辞苑(第六版)』)(鹿毛ほか,2012)と定義されるようです。なるほど。やるきだ。

いや、「やる気」の意味はとてもよく分かるのだが、「やる気」をどう操れば(出せば)いいのか、教えてくれ….

 

サイコうさぎも日々、この「やる気出せ」問題について考えているのですが、この代物、マジで(奥が深いということ)。

今日も何から書いたら良いか分からなくて、早速やる気なくしました。嘘です。いや、嘘じゃない。やる気ないけど、やる気出して書きます。え、無理。いや….、頑張ります(「やる気が出ない」無限ループ)。

 

さて、書きます。

「やる気」を理解するために、今日は心理学で研究されている「動機づけ」について書きたいと思います。「やる気出す方法」の話までいけなくてごめんなさい。しかも、この記事で書けることはほんの一部。

 

ただ、「動機づけ」とは何か垣間みることによって、「やる気出せ!」という謎ダメ出しに対して、「やる気は複雑なんだよ。いったん黙っとけ!!!」と開き直るマインドは提供できるのではないかと思います。

サイコうさぎも白目を剥きながら日々勉強してる感じなので、意味わからんところは開き直って(半ギレで)書きたいと思います。すいません。

 

以下、目次になります。

 

※本文中の(名前, 年号)は引用元を示しています。引用元一覧は、記事末尾に記載します。

動機づけとは ─定義と分類─

動機づけ(motivation)とは、「行動を引き起こし、行動を持続し、一定の方向に導くプロセス」(櫻井,2009)と定義されます。

なるほど。それで、「やる気」とは?サイコうさぎはこの定義からはよく分からなかったので、鹿毛ほか(2012)をそのまま引用します。

 

『例えば「レポート」を書くという行為であれば、その準備を含めて取り組みはじめること(生起)、そして調べたり、考えたりしながら書きつづける(維持)プロセスを指し、そこには図表を加えたり、文章表現を吟味したりといった行為の調整(方向づけ)が含まれている。このような一連のプロセス(動機づけ)を支えているのが、積極的にレポートを書き進めようとする気持ち、すなわち、「やる気」であることは容易に想像できるだろう。』

 

サイコうさぎは容易に想像できなかったけど!!教えてくれてありがとうさぎ!!

 

この鹿毛ほか(2012)が執筆した著書、すなわち

モティベーションを学ぶ12の理論 ─ゼロからわかる「やる気」の心理学入門─』

という本が、動機づけ研究の大枠を捉えるのに良いという噂を耳にしたので、そのまま読み進めてみました。よし、これを読んだらきっと、「やる気」が何なのか分かるぞ。目次に目を通す。ラインナップはこんな感じ(Amazonの書籍情報を引用)。

 

Theory 1 好きこそものの上手なれ―内発的動機づけ 鹿毛雅治
Theory 2 夢や目標をもって生きよう!―自己決定理論 櫻井茂男
Theory 3 生物の根源的な動機を考える―接近・回避動機づけ 村山 航
Theory 4 努力は自分のためならず―他者志向的動機 伊藤忠
Theory 5 知られざる力―自動動機 及川昌典
Theory 6 楽しさと最適発達の現象学―フロー理論 浅川希洋志
Theory 7 何を目指して学ぶか―達成目標理論 中谷素之
Theory 8 自分のことをどう捉える?―自己認知 外山美樹
Theory 9 「できる」はできるという信念で決まる―セルフ・エフィカシー 伊藤圭子
Theory 10 自分の学習に自分から積極的にかかわる―自己制御学習 上淵 寿
Theory 11 どうして無気力になるのか―学習性無力感 大芦 治
Theory 12 自分や周りの人のやる気に働きかける―パーソナルセオリー 金井壽宏

引用元URL:https://www.amazon.co.jp/dp/4772412492/ref=cm_sw_r_tw_dp_U_x_bh26Db016ZHV1

 

いや、多い!!複雑!!研究は有り難いんやだけどさ!研究者は決して悪くないんだけどさ!!

悪いのは、人に「やる気出せ」とか無責任に言う奴。そなた、自分の意図を理解して仰っているのか??そなたの仰るやる気とは何か、どうぞお示しくださいって感じ。

ちなみに、これらの理論、1つ1つがボリューミー。例えばTheory2の自己決定論に至っては、5つのミニ(下位)理論から成り立っている。

複雑すぎてブチギレうさぎなので、この記事では「やる気」が自分の「内側」から生じたものなのか、「外側」から生じたものなのか(内発的動機づけvs 外発的動機づけ)という、シンプルな2項対立に焦点を当てて、お話をしたいと思います。

 

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内発的動機づけと外発的動機づけ

やる気の研究に関心のある方は、

『勉強も仕事も、楽しむことが大事!!』

『好きなことやってる奴には勝てない』

みたいな話、一度は耳にしたことがあるかと思います。

かたや、

『勉強や仕事なんて所詮、アメとムチ』

『仕事なんか、勤労の義務がなきゃやってねえよ』

みたいに思う人がいる。

前者は内発的動機づけに分類され、後者は外発的動機づけに分類されます。

櫻井(2009)によれば、内発─外発という動機づけは、「自律性─他律性」「目的─手段」という2つの軸で概念を整理すると分かりやすいそうです。

図示すると、以下のようになります(櫻井(2009)を参考に、サイコうさぎが作成)。

 

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一般的には、「内発的動機づけは最強!!」「内発的動機づけが高い人を仲間にするのがコスパ良き!!」と考えられています。

すなわち、ある行動をする際に、その行動自体が目的的で自律的に行動している人が、社会的に望ましく、魅力的であるとされている。

仕事を例にすると、「プログラミング大好きな人がプログラマーになり、仕事自体の楽しさで満足しているため、他の報酬(高い給料)を期待していない」みたいな状態が社会的に最強と言えるでしょう。いわゆる社畜は、世間的には魅力的なのです。

一方で、「仕事は嫌いなんだけど、お金がほしい」みたいな、「報酬クレクレ虫」な労働者は、就活でボロクソ叩かれてるし、世間的に魅力的ではないように思われる気がします。

 

ここで疑問。「将来、こういう目標を達成したくて、お金を貯めたいから、一生懸命仕事頑張っている」みたいな動機づけは、どのように説明だろうか。

この場合、「仕事をお金を稼ぐための手段として位置付けている」(手段的な仕事意欲)という点で、外発的であると分類される。「報酬クレクレ虫」とこの人は、この理論の枠組みでは区別できません。

しかし、「『仕事が喜び』なんて価値観は幻想だ!!」(次回のブログで書きます)だと信じているサイコうさぎにとって、この人はとても魅力的な人物に映る。しっかりと自分のキャリアを見据えていて、地に足がついてる感じで、とても好ましい人物であると。確かに手段的な動機づけではあるが、とても自律的ではないでしょうか。

この、「外発的動機づけの中でも、自律性は段階がある」という観点に焦点を当てた理論として、有機的統合理論」というものがあるので、それを最後に説明したいと思います。

 

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外発的動機づけの自律性 ─有機統合理論─

※この節では、特にことわりがないかぎり、櫻井(2009)を要約した内容になってます

 自己決定論の提唱者である、DeciとRyanは、手段的な動機づけ(「目的─手段」という枠組みによる外発的動づけ)による行動が、必ずしも他律的ではないことを指摘しています。そして、内発的動機づけと外発的動機づけを、自律性の観点から、一元的(同一直線上)に捉えることが適切であると考えました。

そこで、DeciとRyanは、最も自律(自己決定)敵な動機(づけ)である「典型的な内発的動機づけ」から、いわゆる無気力(無動機)に至る動機(づけ)の変化の過程(あるいは発達)に過程を、「自己調整」(self-regulation)のあり方によって6段階に分類しました。

特に、外発的動機づけの段階については、社会的な価値を自分のものにしていく内在化(internalization)に着目して分類を行っています。

図示すると、以下のようになります(櫻井(2009)を参考に、サイコうさぎが作成)。

 

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櫻井(2009)は、Lam & Guland(2008)の研究を取り上げ、就業動機が自律的だと、職務満足度や組織(職場への)コミットメントが高く、健康的であることを指摘しています。

 

※以下、サイコうさぎの解釈

 

先ほど例に挙げた、「将来、こういう目標を達成したくて、お金を貯めたいから、一生懸命仕事頑張っている」みたいな動機づけは、上記の同一化調整に含まれると、サイコうさぎは考えます。手段的な動機ではあるけれども、かなり自律的。この動機を上手に使って、組織で良いパフォーマンスを上げる可能性は十分にあると思います。

「動機づけの自律性」は、キャリア形成の観点において非常に重要な意味をもつと考えられるのですが、意外にもあまり研究されてないようです。サイコうさぎ、ここに切り込むことができたらチャンスかも。

自分自身や他者の努力量から、「やる気」を推し量りたくなる気持ちも分かりますが、その背景にどのような価値観を内在化しているのかを振り返ることが、動機づけをコントロールする上で重要なのではないかと思います。

ちなみ余談ですが、強迫観念によって働くことがやめられない人、すなわちワーカホリズムな人は、「取り入れ的調整」に強く動機づけられている(たとえばStoeber & Townley, 2013)ことが示唆されています。「やる気があるから、自律的」とは、一概に言えない部分があるのです。

まとめ

この記事では、

「やる気を出せ」という奴をぶっとばしたい やる気研究の複雑さ

・内発的動機づけと、外発的動機づけの分類

・外発的動機づけの自律性の着目した、有機統合論

について書きました。

 動機づけ研究の奥深さ、面白さが少しでも伝わっていれば幸いです。

 

この記事では動機づけ研究のほんの一部しかお伝えできなかったので、もっと知りたい方は、今回引用した文献などをご覧いただくか、サイコうさぎまで連絡してくださったらと思います。

これからも、白目剥きながら動機づけの研究していきます。また書きます(白目)。

 

本記事で引用した文献を記載しておきます。

Lam, C. F., & Gurland, S. T. (2008). Self-determined work motivation predicts job outcomes, but what predicts self-determined work motivation?. Journal of research in personality, 42(4), 1109-1115.

鹿毛ほか(2012).モティベーションをまなぶ12の理論 ─ゼロからわかる「やる気」の心理学入門─ 金剛出版

櫻井茂男(2009). 自ら学ぶ意欲の心理学 有斐閣

Stoeber, J., Davis, C. R., & Townley, J. (2013). Perfectionism and workaholism in employees: The role of work motivation. Personality and Individual Differences, 55(7), 733-738.

 

次回は、「労働観の変遷」について書きたいと思います。

サイコうさぎ、普段は働く人が少しでも仕事に前向きになれるよう、「ポジティブ心理学」「ワーク・エンゲイジメント」などの観点から仕事を捉えようとしています。

だからといって、「労働の概念∈ポジティブな概念」だとは、思っていないのです。

というのも、社会思想史的に言うと、「労働は隷従(隷属)行為である」と考えられてきたからです。その前提を置いた上で、どう仕事をポジティブに捉えるか。労働∈隷従行為であるのならば、働く人にどのような動機づけを求めればよいのか。そのことについて考えたくて、次回は労働観の変遷についての記事を書きたいと思います。

 

ではまた、お会いできたら嬉しいです。

 

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